学力向上タイトル 「使える美術」・・レタリング 手先動かし 学力向上  

千里 九「3学期、1年生の美術はレタリングからスタートである。相手を投げ飛ばすのではない。それはレスリングである。レタリングとは、手で「文字を書く」ことであるのは、人口に膾炙している事実である。」

 木彫レリーフ

美術2

 美術3

これがゴジック体(写真1)

レタリングに挑む(写真2)

これが明朝体 (写真3)

 美術 ~ 言葉を刻む ~ 

  今日C棟2階どんつき美術室の3限目は、1年5組の授業でした。太治T(美術科)が、刃物をにぎり・・・ひたひたと危険が近づいて、刻みます。サスペンス劇場ではありません。言葉を刻むレタリングの時間でした(左写真)。

 レタリング レタリングとは、墨や毛筆ほど味わいのある手法ではないが、パソコン全盛期の今、新ためて手で書くことの良さを考えるにはもってこい!ということで、担当の美術科教諭が1年生の課題にしているのである。生徒達は、レタリング字典という美術の教科書を開く(写真1)。文字を読みやすく、一つのまとまりとして感じさせるようにデザインされた書体を集めた、こんなふうに書いてねという手本集である。学ぶとは、まず真似ぶこと。このお手本を元にして、清く正しく美しく書きうつす作業を始めるのだ(写真2)。コツコツと。このコツコツが手先の器用さにつながる。

 中学校で学ぶ書体は、基本2つ。一つ目は縦線が太く、横線が細くデザインされた明朝体(写真3)。教科書や誌面など文字数が多い場面に使用されるおなじみの書体である。毛筆のハネやハライ、トメの形からきているそうだ。二つ目は縦線・横線ともほぼ同じ太さであるゴシック体。遠くからでも視認性が良いので、このデザインは公共施設の標識などに多く使用され、人口に膾炙している書体である。このHPのタイトルもゴシック体である。どのような場面でどの書体を選ぶかによって、同じ文章でも印象が、がらりと変わる。デザイン業界では色や写真、イラストに続く大事な要素の一つなのである。

 あなたがすきです 余談ではあるが美術科教諭太治Tは、生徒たちに言った。「あなたがすきです」ドキッとする生徒たち。もちろん「私もです」と生徒達は言うかどうかは置いといて、ここでは調査をおこなったのだ。「あなたがすきです」と同じ文章でつづられた五つの書体を見せ、好きな相手からもらって嬉しい書体を選んでもらったのである。用意した書体は、5つ。明朝体、ゴシック体、教師(私)自筆の手書き文字、パソコン内のフォントから丸文字2種類をチョイス。予想では、教師(私)自筆の手書き文字がちょーいいす!と圧倒的多数を占めるだろうと自画自賛、思っていた。が、どのクラスにおいても、明朝体がいいという答えが大半を占めたのだ。私の心のこもった手書きの文字が明朝体に負けるなんて。「先生の自筆の文字はどう?照れなくてもいいよ」と尋ねると、「先生の手書きやと思うと・・・なぁ」照れを含んだ明朝体「なぁ」が返ってきた。

 太治T「パソコンが普及し始めたのは、私が大学3年生の頃です。それまで学校などで配付されるプリントのほとんどは、先生自身の手書きで作成されたもので、手書きゆえの読みづらさはあったものの、作成された先生の苦労やその人となり、愛情が伝わったものでした。今はとかく効率優先です。短時間でスマートに物事が処理されていき、その恩恵を受けながら流れるようにせわしく毎日が過ぎて行く。便利な世の中なのですが、昨日の出来事の慌ただしさだけが感覚として残り、これでいいのかなぁとも考えてしまいます。『手っとり早いものに  心は宿らない』これは昨年の秋に亡くなられたある有名な俳優さん(健さん)の言葉ですが、手間暇かけてつくるレタリングには、心が宿ると信じ授業をしています。」 

手っとり早いものに 心は宿らない教科担当