春はいま 春はいま 私の胸にある

三寒四温を繰り返しながら、いま、旅立ちの春を迎えました。

51期生のみなさん、卒業おめでとう。教職員を代表して心よりお祝い申し上げます。保護者や来賓の皆さま、在校生とともにみなさんの晴れの日をここで祝えること、嬉しく思います。本日は、ご多用の中、ご来賓として学校運営協議会〇〇様、PTA会長〇〇様はじめ、地域関係団体の方々にご列席いただいています。ご来賓のみなさま本日は誠にありがとうございます。

また、保護者の皆様におかれましては、身体も心も大きく成長し、言うことを聞かなくなって叱ったり、褒めたり、ぶつかったり、大変な日々も多かったことでしょう。その努力が報われて、今日の晴れの卒業式、みなさんのお子さんたちは立派に9年間の義務教育を終え、十一中を巣立っていきます。本当におめでとうございます。

さて、今日は「宝物」についてのお話しをします。

宝物は「価値の高いものやかけがえのない大切なもの」と定義されています。

『みなさんにとっての宝物は何ですか?』

昨日の予行の時に私が出した宿題です。忘れた人は今考えてください。自分の宝物が出たときは手を挙げてください。

➀推しの写真・推しのグッズ ②スマホ ③ゲーム   

これらは、実際にあるもの、『形があるもの』ですね。大人なら、車とか時計とかブランドものとかがこの部類にあたるのでしょう。

次に、形のないものを聞いていきます。

➀友だち ②家族   

これらは、ものではないけど、人に関するものですね。続けていきます。

➀好きな芸能人との時間(コンサートなど) ➁好きな人との思い出やその人と過ごした時間

答辞を読む卒業生に聞いてみたら、

➀家族 

➁友と共に過ごした時間 

③空間(みんなと過ごした、一緒に演奏した、練習した雰囲気)

④時間(色々お世話になった、関わってくれた人との会話ややりとりした時間)

と答えてくれました。

どの答えも素敵ですね。全て正解です。思い出や時間、空間と言った、形のないもの、貴重な経験ほど尊いものとなり、忘れにくく、ずっと心に残ったりするものです。保護者のみなさんにとっての宝物は、皆さん(自分の子ども)と答える方が多いことでしょう。

目を閉じればよみがえる あなたの笑顔に守られて 今日まで歩いてきた

私にとっての宝物は51期生のみなさんと共に過ごした時間と思い出です。たったの1年間ではありましたが、親しみやすく、笑顔の多い、温かい学年でした。朝のあいさつや廊下や教室で会った時に、人懐っこく気軽に話しかけてくれて嬉しかったです。

特に印象に残っていることの一つは修学旅行のクラスレクです。大広間で係が企画したゲームで盛り上がり、宿舎中に響き渡った大きな笑い声と最高の笑顔が忘れられません。

そしてもう一つは体育大会のダンスです。ダンス委員を中心に練習に励み、クラスメート全員の協力で創りあげ、見事な完成度と一体感に感動しました。ダンスだけでなく、競技に応援に係の仕事、片付けまでいい先輩ぶりを見せてくれました。コロナで一度学年別になっていたのをみなさんがもとの形に再び戻し、新しい形を創り出し、成功させてくれました。十一中の新たな歴史を築き、後輩たちの素晴らしいお手本となってくれたことに感謝しています。数々の思い出と感動をありがとう。

そんなたくさんの感動をくれた君たちの卒業にあたり、1人の高校生についてのお話をします。

先週の土曜日、少路の公民分館主催の人権講演会に参加してきました。講師は〇〇さんという豊中市に住む17歳の高校生。〇〇さんには8年間、病気と闘ってきた3歳下の大地さんという弟がいて、5歳の時に小児がんにかかりました。当時の〇〇さんは8歳で、「弟が死んでしまうかもしれない」と泣きじゃくったそうです。抗がん剤、移植、腫瘍(しゅよう)の摘出手術、放射線治療。大地さんは副作用に耐えながら治療に励み、〇〇さんはお見舞いに通い「思ったより元気やん」と話しかけると「お兄ちゃんが来てくれたから」と答え、『太陽のような弟だな』と思ったそうです。

大地さんは1年間の懸命の治療を乗り越えて退院し、翌年には〇〇小学校に入学し、サッカーや運動に汗を流せるようになりました。家族3人で「あたり前の幸せ」をかみしめる日々が続きましたが、3年半が経った小学4年の時、全身に再発が見つかり、再び闘病生活が始まりました。歩くのが難しくなり、髪の毛が抜けたり、痛みが増したりして、車いすに乗るようになりましたが、『この先どうなるかわからない、これが最後になるかもしれないのだから、大地さんのやりたいこと、したいことは全てさせてあげよう』と考え、『富士山登頂、キャンプ、海外旅行』など、治療をしながらやりたいことをどんどんやっていきました。そして何度も再発をくり返すがんと闘い、迎えた小学校の卒業式。大地さんは「いまを大切にして、全力で生きていきます」と宣言しました。どんなに辛くても治療を続ける覚悟を決めていたのです。中学入学後も闘病しながら車いすで学校生活を送っていましたが、夏にガンが転移し、十月に入って体調が悪化し、緊急入院、9日の朝に天国へと旅立ちました。〇〇さんは、今は高校に通いながら、病気や障害がある兄弟を持つ「きょうだい児」に向けた支援を行う団体を立ち上げ、レモネードスタンドプロジェクトというレモネードを売って、そのお金を小児がんの研究や施設に寄付するという活動をされています。〇〇さんの目標は、「病気や障害がある人たちもみんなが自分らしく輝けるやさしさが循環する世界を作ること」と語っておられました。生前の大地さんに、「宝物は何」と聞いたら、

「宝物は普通の日」「当たり前の毎日が宝物」

と答えたそうです。

いま世界を見渡せば、昨日もイランの小学校が攻撃を受け、犠牲者が出たという報道がありましたが、いたるところで戦争や紛争が続き、安心して学ぶことすらできない子どもたちがたくさんいます。平和は「当たり前」ではありません。

朝、門でみんなの顔を見ながら、あいさつを交わすのが楽しみでした。昼休みにグランドでドッジボールやバレーボールをして楽しんでいる姿を見るのが好きでした。廊下から授業を見て、真剣なまなざしで学んだり、集中できずこちらを見てニッコリ笑って手を振ってくれる、そんな当たり前の毎日も今日で終わり、明日からもう学校には来ないんだなぁ、と思いながら今ずっと顔を見ていました。

さよならは さよならは 笑顔で歌おう 忘れないで どこにいても つながっている

我々教員は生徒たちに伝えたいことがあって、一緒になって何かを成し遂げたいと思って教師という仕事を選び、みんなと出会い、信じて、裏切られて、すれちがって・・・を繰り返し、それでも愛情をこめて関わり続け、なんとかわかってほしい、成長してほしい、と信じながら、こうやって大事な大事な君たちとの青春を一緒に過ごさせてもらって、本当にいい仕事です。

私たちの望みはただ一つ、携わった君たち全員が幸せになることです。たった1回しかない君たちの人生。やりたいことをやり、なりたい自分になるために、

『宣言』して、『行動』を積み重ね、挑戦と失敗を繰り返しながら成長してください。

そんな姿を見るのが、みんなが夢や目標を叶え、宝物を作ってくれることが、私たちの幸せです。夢や目標を叶えるのは簡単ではありません。

最後に絵本作家の西野さんがされていたお話をします。時計ってすごく面白くて、長針と短針があって、1時間に1回重なるんです。すれちがうんです。1時5分で重なって、2時10分ぐらいで重なって、3時15分くらいで重なって、長針が追いぬいたと思ったら、また4時20分で重なる。毎時間重なるようにできているのですが、11時台だけは重ならないのです。11時台だけは短針が先に逃げ切ってしまい、2つの針が重ならないのです。次に2つの針が重なるのは12時、鐘が鳴る時です。

伝えたいメッセージが何かと言うと

『鐘が鳴る前は報われない時間があるということ』です。

これは努力して何かをなしとげた人にはみんな経験があることだと思うのですが、今後みなさんにも必ず『人生における11時台』というものがやってきて、苦しい時、しんどい時が訪れます。でも大丈夫。時計の針というのは必ず重なります。明けない夜はないのです。前を向いて進んでいけば、必ず道は見えてきます。

鐘は必ず鳴ります。その鐘を喜びの鐘にするか、ゲームオーバーの残念なブザーにするかは、みなさんの手にかかっています。あとちょっとの我慢、努力を続け、何度も失敗から立ち上がり、喜びの鐘を鳴らしてください。挑戦し、粘り強くやり続けて人生の11時台を乗り越え、夢や目標を叶え、幸せになってください。みなさんの挑戦がうまくいくことを願っています。

地域で、車が脱輪して困っていたら、手助けができる

パンクして困っていたおばあちゃんがいたら、声をかけ、荷物を持ち、自転車を押して一緒に自転車屋まで連れて行ってくれる そんな優しい生徒が51期生にはたくさんいます。

高校生の〇〇さんが目標とされていた「思いやりがあふれるやさしい社会」「よりよい世界」を、きっと51期生のみなさんなら創っていくことができるでしょう。

今ある宝物を大切にしながら

新しい宝物・夢や目標・ワクワクするものを探してください。

それではみなさん、退場の前に、このメンバーで歌う最後の合唱『春はいま』の歌詞を結びとし、

式辞といたします。

夢をいま 夢をいま あなたと始めよう 

忘れないよ 輝く日々 その眼差し

ありがとう さよなら ありがとう

令和8年(2026年)3月13日

豊中市立第十一中学校 校長 川村 健市