新入生の入学を祝福するかのように、今を盛りと桜が咲き誇るなか、本日ここに、多くのご来賓、並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、第五十二回入学式を挙行できますことは、私たち教職員一同にとりましても、大きな慶びであります。

ご来賓の皆様には、公私ご多用の中、ご臨席を賜り、厚くお礼を申し上げます。

また、保護者の皆様には、晴れの日を迎えた お子様の成長に思いを馳せて、そのお慶びは、いかばかりかと、心からお祝い申し上げます。

 

さて、新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。

今日からみなさんは、晴れて中学生です。中学校と小学校では、学校の仕組みが大きく違います。授業では教科ごとに先生が変わります。教科書も小学校に比べ分厚く、中を見ても文字の占める割合が大きくなります。2時間目と3時間目の間の長い休み時間もなくなります。11中には5つの小学校から集まってきます。それ以外の小学校や日本以外の国からやってきた友達もいます。戸惑うことがたくさんあって不安も多いことでしょう。優しい気持ちで、助け合って慣れていきましょう。

中学生になると、小学生の時とは違って、もう子供じゃないんだから、これくらいは判断ができるだろうと、君たちは、少しずつ「大人扱い」されるようになります。失敗を恐れずに経験を増やしていきましょうね。

 

さて、入学にあたり、三つのことをお話しします。

まず一つ目は、この学校が大切にしていることです。

この十一中には、制服がありません。細かい校則もありません。

そのかわりにおよそ三十年前に君たちの先輩たちが作り、その後ずっと大切にしてきた「生徒憲章」というものがあります。

生徒一人ひとりが、この「生徒憲章」に基づいて、自分で考え、自分の行動を正していくことを大切にしています。

中学生になって新しく出会う友達は、考え方や行動が自分とは違っているかもしれません。小学生の時から知っている友達も、自分とは成長のスピードや方向が変わっていくかもしれません。

しかし、お互いの違い認め合い、一緒に良い学校を、地域をつくっていこうという思いが「生徒憲章」には込められています。

一年間に何度か、生徒憲章について考える授業があります。皆さんも生徒憲章にうたわれた精神を受け継いで、十一中での生活を素晴らしいものにしてください。

 

次に二つ目です。

本を読んでほしいということです。

君たちは大人よりもずっと心の動きが柔らかいです。そして、これから、何が大切なのかを問い直す時期に入ります。だからこそ、たくさんの本を読んでほしいのです。

文字を読みながらその場面や登場人物の気持ちを想像してほしい。

そして、たくさんの言葉をおぼえてください。すこし難しい言い方をすれば、語彙を増やしてください。

特に、「気持ち」などの、形のないものを表現できる 言葉の大切さを知ってほしいと思います。

他人の気持ちと共感できる想像力の豊かさ、そして自分の言葉で表現できる力をつけるために、書物に親しんでほしいと思います。

 

スマートフォンを持っている人もいるかもしれません。3年前から全ての小中学生にタブレットが配られています。これからの時代は、こうしたICTの道具をどのように使って生活していくかということはとても大切なことです。

しかし、顔の見えないSNSの世界ではなく、直接相手の表情を見ながら工夫してコミュニケーションをとること、顔を突き合わせて対話しながら答えを見つけていくことの練習を、10代のうちにSNSで使う以上にたくさんしなくてはいけません。

言葉の持つ力、言葉の怖さと素晴らしさを知り、自分の気持ちや考えを表現するのにぴったりのたくさんの言葉を身に着けましょう。

 

最後、三つ目は、3週間前に十一中を巣立っていったある卒業生が、後輩に残した言葉を紹介します。こんなメッセージです。

勉強が好きでない私は、テストのたびに、勉強は何のためにするのか、学校は何のためにあるのかを考えました。

そして3年生になり自分の進路と向き合う中で、学校は勉強する場所ではなくて、学びや経験を通して考える力をつける場所だ。自分にとって学校は、一人ではできないことをできる場所、自分を知るきっかけになる場所だったと気づきました。

学びって人と関わることでしかできないと思った、そして、私はこういうことが好きなんだ、と自分を知ることができました。

中学の3年間は、人生の中ではちょっとの時間かもしれないけれど、とても貴重な時間でした。

後輩の皆さんは、自分はどんな人なのか、自分は何が好きなのか、たくさんの経験から学びを得る3年間にしてほしいです。 というメッセージでした。

 

 

新入生の皆さん。いよいよ今日から君たちの、新しい生活が始まります。

中学校の三年間は、本当にあっという間に過ぎていきます。

熱中できる好きなものと出会ってください。

一日一日を大切に、充実した日々を過ごしましょう。

 

令和6年(2024年)4月5日

豊中市立第十一中学校

校長  浅田勝利