熊野田のむかし話(古老の話)

 私らの若い時分は、熊野田のたけのこがさかんで、よう採れる時には、うち一軒でも、一日三百貫は掘ったもんです。朝のはよから、弁当持ちで出て、昼食べた残りは、竹の皮にのせて、きつねの穴のねきに置いて来てやったもんです。

 けど、ある日のこと、山へ行ってみると、きのう掘ったたけのこ穴へ入れてきた、豆かすやまめほしいわしが、堀りちらかしてあり、わきに点々と、きつねの足あとがあります。この足あとからこれは日ごろ、弁当の残りを、くわしてやったきつねやなと、にらみましたので、かんべんならんと思うて、山の中に聞こえるように、「こら、きつね、きょうもう一ぺんこやしをいれて帰るが、もし掘りちらすようなことがあったら許さんぞ。」とさけんで帰りましたところ、翌朝から、ぴたっと悪さがやみました。

 おかしな話です。

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