天竺川や高川の提防には、松の木が並んで立っていますが、これは50年前の台風のあと、村の人が植えかえたものです。その前には高川の土手にもっと大きな松が何本もあったそうです。これはその松の木の話です。

昔、小曽根と浜の間に、手足がとびきり長く、大きな口をしたくもが住んでいたそうです。この大くもは、太いねばねばした糸をはきだしながら、天竺川から高川の松まで届く、大きなくもの巣をかけました。そしてそこにひっかかる鳥やけものを取って食べていました。この大くもはそのほかにも村を通る旅人をつかまえては、体を刺して血をすったり、くもの糸でしばったり、悪いことばかりしてみんなを困まらせていました。

そこで村の人が相談して、この大くもを退治してしまったそうです。それから、この大くもが糸をかけた松を、「大くもの松」とよぶようになったそうです。

古くから、高川の提防の道は三国街道とよばれて、大阪や尼崎から船で神崎川を渡り、この松並木を通って、箕面や能勢に行く人やまた若竹町のたけのこを運ぶために、おおぜいの人が通った道です。大くもがいなくなってからは、この松並木の下で旅人たちは安心して休んだことでしょう。

おしいことに、この松の木は昭和9年の室戸台風でたおされて、なくなってしまったということです。