大根おろしによる消化の実験

実験日:2022年9月8日(木)2限

だ液がデンプン(炭水化物)を消化することができるかを確かめる実験がありますが,

コロナ禍の影響でだ液を体外に出すことができません。

そこで,だ液の代わりに大根おろしのしぼり汁を使って実験をすることにしました。

だ液の場合はアミラーゼという消化酵素がはたらいてデンプンが麦芽糖に分解されます。

実は大根にもアミラーゼが含まれていて,大根おろしのしぼり汁を使えばだ液と同じくデンプンを麦芽糖に分解してくれます。

大根おろしは消化を助けてくれる,胃腸に優しい食べ物なんですね。

 

1.実験の流れと結果の確認(予想)

実験前に今回の反応,使う薬品,実験の流れと結果(予想)をまとめる。

あとは検証実験!試験管Aはデンプン液にだ液を混ぜるので,デンプンは分解されて麦芽糖になるはず。

デンプンが分解されたことはヨウ素溶液が反応しないことで,

麦芽糖ができたことはベネジクト液が反応することで確かめられる。

↑左がヨウ素溶液。右がベネジクト液。

 

2.デンプン液を2つに分ける

 試験管Aに入ったデンプン液20mLのうち,

 10mLを試験管Bに分ける。

 これで試験管Aと試験管Bにデンプン液が

 10mLずつ入ったことになる。

 

 

 

3.大根おろしのしぼり汁を加える

 試験管Aには大根おろしのしぼり汁を10mL加え,

 試験管Bには水を10mL加える。

 試験管Bは対照実験※のために用意する。

 ※大根おろしのしぼり汁がなければデンプンが分解されないことを確かめる。

 

 

 

4.お湯の調整

 60℃のお湯をビーカーに入れ,水を加えて40℃に調整する。

 大根のアミラーゼがはたらきやすい温度は40~50℃らしい。

 

 

 

 

 

5.試験管を温める

 40℃に調整が完了したら3~5分間,試験管AとBを温める。

 試験管Aではアミラーゼが頑張ってデンプンを分解しているはず…。

 

 

 

 

6.AとBの中身をさらに2つに分ける

 40℃で3~5分あたためたあと,試験管Aの中身の半分を試験管A’に,

 試験管Bの中身の半分を試験管B’に分ける。

 これで試験管A,A’,B,B’の4本が完成。

 

 ← 右手側が試験管Aで,左手側が試験管A’。

   まだA(右手側)が少し多い。

 

 

 

 ← 試験管Bの中身の半分をB’に分けているところ。

 

 4つの試験管に次の薬品を加える。

  A:ヨウ素溶液 A’:ベネジクト液

  B:ヨウ素溶液 B’:ベネジクト液 

 

ヨウ素溶液はデンプンに反応して青紫色になる。

ベネジクト液は糖に反応する。加熱をすることで麦芽糖が少ないときは黄色の沈殿,

麦芽糖が多いときは赤褐色の沈殿ができる。

 

試験管AとA’はデンプン液+大根おろし(しぼり汁)なので,デンプンが分解されて麦芽糖になる。

よって,デンプンが残らないのでヨウ素溶液を加えても反応せず,できた麦芽糖によってベネジクト液が反応する。

 

試験管BとB’は大根おろし(しぼり汁)を加えていないので,デンプンが分解されない。

よって,デンプンが残っているので,ヨウ素溶液を加えると青紫色になり,ベネジクト液には反応しない。

 

 

7.ベネジクト液を加えて加熱

4本の試験管に各薬品を加えていき,結果を記録する。

以下,試験管A’にベネジクト液を加えて加熱するときのようす。

  

 突沸を防ぐため,沸騰石を入れる必要がある。

 また,沸騰すると中身がすぐに吹き出し,高温になった内容物が

 飛び出す危険性があるので,加熱は班員全員が前に来て,

 先生の前で班の代表者にさせた。

 試験管の角度は45度で口の先を人に向けないように注意する。

 

 

 

 

 

 気泡が出てきたら試験管を左右に振りながら加熱する。

 写真は少し色が変わってきたところ。

 

 

 

 

 

 黄色の沈殿ができたので成功である。

 色が変わったらすぐに試験管を引き上げる。

 このあと,ベネジクト液を加えた試験管B’も加熱を行う。

 

 

 

 

 

8.結果

左からA,A’,B’,B。

Aはヨウ素溶液に反応せず,A’はベネジクト液に反応。

B(一番右)はヨウ素溶液で青紫色に変化し,B’はベネジクト液に反応せず。

 

9つの班,すべてがこのような結果になった。

 

AとA’の結果からデンプンが大根おろしのしぼり汁の成分(アミラーゼ)によって麦芽糖に分解され,

BとB’の結果から大根おろしのしぼり汁がなければデンプンが分解されずに残ったと考察できる。

 

大根にはもともと糖分が含まれているようなので,その糖分がベネジクト液の変化にどのような影響を与えるかを知るには,

おろし汁だけの試験管を用意してベネジクト液を加えて加熱する対照実験が必要である。

今回はテーマからずれた内容になるので,そこまでは行わなかった。

 

9.最後に

コロナ禍の影響で,感染症対策の観点から授業でできない実験や観察がいくつか出てきてしまっている現状がある。

しかし,すぐ諦めずに,今回のように工夫次第で同様の実験ができることがあるので,

現状でどうすれば実践できるかを考えることが大切だと感じた。

ただ,やはり自分のだ液の能力を確かめてほしかったので,残念ではある。

(今回は自分のだ液の取り方を教えることにとどまってしまった。)

ちなみに,今回と別のクラスでは間違って80℃のお湯で試験管を温めてしまい,

アミラーゼがはたらかずに結果が全班失敗している。

温める温度を変えたら結果がどのように変わるのか確かめてみたい!なんて声が上がったら是非,やってみたい。